9月30日から10月10日まで兵庫県で開催される『のじぎく国体』直前ということで、
神戸の中心地・三ノ宮、街のあちこちで大会キャラクター“はばタン”を見かけた。
試合会場の神戸ウィングスタジアムは全天候型。この日は晴れということで天井が
開いており、暗く突き抜けた夜空がナイトゲームに深みを添えていた。
【試合前】
この日、小井手選手が控えメンバーに名を連ねた。昨年9月17日のホームゲームで
大怪我を負い、24歳の1年間をリハビリとサテライトチームでの調整で費やした
だけに、想いがあふれ出る。
「チームメイトが楽しそうにボールを追いかけるそばで、地道なリハビリが続き、本当の
意味で『忍耐』というものを学びました。何度も挫けそうになった時に、サポーターの
人たちの応援が本当に励みになり、もう一度ピッチに立ちたい!と奮起させてくれました。
また、特に仲良くさせてもらっているチームメイト、同じ怪我から復活した選手、執刀して
下さった病院の先生、理学療法士の先生、家族、友達…他にも、たくさんの方に
支え励ましてもらいました。皆さん本当に有難うございました。
これからは元気な姿で活躍することで恩返ししなければならないと思います。今シーズン、
あと何試合出場できるか分かりませんが、出た試合では全身全霊を込めて頑張ります」と
感謝と意気込みを力強く語った。
18:15、ウォーアップルームで円陣が組まれる。岸野コーチの「相手は構えてくるだろうが、
我々にとっては関係ない。持っている力を全部出し切り、粘ってくれ」の言葉に全員が
大声で応える。程なく、室内は瞑想の静寂に包まれた。
松本監督は「戦術の“術”…どのように試合の駆け引きができるかが今日のポイントに
なるだろう。それぞれが意識して戦ってほしい」と語った。そしてピッチの方向を向いて
「決して手を抜かない。試合前の練習のダッシュでも全力で行なう。今季の我々を
象徴している場面ですよ」とサガン戦士たちを見つめた。
キックオフを目前に、両チームサポーターのボルテージも最高潮だ。
サガン戦士たちも決戦の場に姿を現した。
【前半】
*鳥栖のキックオフで試合開始。「相手の持ち味を消す」(松本監督)の狙い通り、守備面での
奮闘が著しく、神戸の選手たちを自由にさせない。
*2分:右サイドを長谷川→山口と繋ぐ。5分にも山口選手が神戸DFの裏を狙った浮き球のクロスを
試みる。
*7分:加藤選手が前線へロングパスを出す。クリアボールを再びマイボールにして、廣瀬選手が下がり気味のポジションでパスを受け中央に叩くが、その先が繋がらない。
*10分:神戸・栗原選手と激しくボールを奪い合い、競り勝った長谷川選手。金選手を経由して左サイドの山城選手へと素早くサイドチェンジを試みる。
*11分:高橋選手が左サイドに流れてラストパスを出し、こぼれ球を長谷川選手が神戸から奪い取る。
14分にも高橋選手が起点となり、右サイドで細かくパスを繋いでゴール前への進入を試みる。
*16分:左サイドから山城選手がグランダーのシュートを放つが惜しくも外れる。
*17分:衛藤→山城のパスをキム選手に寸断されたが、すぐに金選手が応酬、奪い取った。
*神戸の攻撃のキーマンたちを抑える鳥栖イレブンに、神戸は攻め急ぎ、精度を欠く。
鳥栖もチャンスを多く作りながらも、肝心な場面でミスが生じ始める。
*21分:ゴール前を固める神戸DFを掻い潜り、廣瀬選手がシュートを放つ。惜しくもDFに当たり
シュートは失速した。
*23分:加藤選手からのロングフィードを受けた高橋選手が、ダイレクトでシュートを放つ。
*前線の小林選手と廣瀬選手。飛び出しやパスのタイミングが今ひとつかみ合わない。
*25分:長谷川選手がマークし続けている栗原選手を倒し、FKを与えてしまった。しかしゴール前で
ヘディングでクリアし、自ら責任を果たした。
*この後、神戸の時間帯が続くが、金選手のスライディングカットや衛藤選手の状況判断素早いクリア、シュナイダー選手の正確なキャッチング、CB二人の速い寄せなどで、神戸にチャンスを作らせない。
*36分:パスを受けようとした小林選手が倒され、FKを得る。右寄りから逆サイドを狙った山口選手の
FK、金選手と高橋選手が構えたが惜しくも逸れた。
*38分:金選手からのパスを受けた山口選手が右サイドに開いてドリブル突破したが、ボールを持ち過ぎてしまい、神戸・朴選手に奪われ速攻を許してしまう。
*41分:[警告(神戸)]三浦淳宏(ラフプレイ)
鳥栖ゴール前で栗原選手にプレスをかけた後、ドリブルでオーバーラップを試みた長谷川選手が三浦に倒された。これで得たFKはチャンスに至らず。
*43分:ゴール前に張った神戸・近藤選手を、加藤選手・金選手・衛藤選手で囲み、ゴールを割らせなかった。
【松本監督 ハーフタイムコメント】
・サイドにボールを出した時に抜かれているので、パスを速くしよう
・中盤とサイドを起点にしよう
・自分たちのミスでやられている
【後半】
*神戸のキックオフで試合開始
*46分:金選手から縦にロングパスが渡り、小林選手がサイドに叩き、山城選手が左から飛び込む。
これで得た左スローイン、山城選手が中央に切り込み、高橋→小林と渡るがシュートならず。
*48分:小林選手から左サイドの山城選手へパス。山城選手は右サイド前方への見方の走り込みを期待してスペースにパスを出したが、他の選手の反応が一瞬遅れ、チャンスには至らず。
*52分:衛藤選手がミドルシュートを放ち、CKを得る。左CKは加藤選手が逆サイドで折り返したが、
惜しくもゴールラインを割った。
*53分:山口→小林と素早く繋ぎ、ゴール前へラストパスが出されたが、神戸GK・荻選手にキャッチ
されてしまった。なかなか神戸ゴール前で脅威を与えられない。
*55分:[失点(0-1)] 神戸・三浦淳宏
PA外側で神戸選手にファールをしてしまう鳥栖。三浦選手のFKはゴールネット目前で
ストンと落ちる絶妙なコントロールのボールで、シュナイダー選手も動けなかったほど。
この3分後にも同じ場所で加藤選手が三浦選手を倒してしまい、FKを与えてしまうが、これは
大きくゴールを外れ、一難逃れる。
*61分:小林選手がやや右よりの角度から神戸ゴール前に持ち込み、シュート体勢を作る。神戸DFに
阻まれたため左に叩き、パスを受けた廣瀬選手が中央に切り込もうとしたが、跳ね返った
ボールへのハンドと見なされた。
*63分:[交代]山城→新居辰基
新居選手がトップに入り、廣瀬選手が左サイドに移動した。
*64分:[交代(神戸)]近藤→平瀬智行
*66分:新居選手がドリブルで突破を図り、PAで粘り強くボールキープ。フォローに入った衛藤選手がパスを受けて左方向へ流す。これで得た左CKは、惜しくもGK荻選手にキャッチされた。
*67分:[交代]衛藤→尹晶煥
*68分:左サイドの高地選手が、右前方のスペースに飛び出した新居選手へ絶妙なロングボールを出
す。
*69分:[交代]山口→小井手翔太
*70分:尹選手からのパスを受けた新居選手がボールをキープ、小井手→高橋と回って再び新居選手 へ。神戸DFを引き付けたところで小林選手にパスを出す。
*立て続けに交代を行い、攻撃のリズムを取り戻した鳥栖。攻守の入れ替わりが目まぐるしい
展開になる。
*73分:右サイドの小井手選手が好判断でサイドチェンジを行なう。待ち受けた廣瀬選手がキム選手に
倒されFKを得るが、これは惜しくも狙いを外す。
*74分:[警告(神戸)]キムテヨン
高地選手が攻撃を仕掛けるべく左サイドを駆け上がろうとしたところを、キム選手がスライディングで阻止した。その際、すね当てのない部分にスパイクが入り、無理な姿勢で着地したため、足を負傷してしまう。高地選手はタンカで運ばれ、そのままピッチを去ることとなった。
既に交代枠を使い切っていたため、廣瀬選手がやや下がり目に位置し、金選手とともに左サイドを広くケアする。
*76分:神戸のカウンター攻撃を受けるが、ボールを持った朴選手を金選手が確実に抑え、クリアした。
神戸のCKはゴールラインを割った。
*77分:[交代(神戸)]栗原→ガブリエル
*78分:尹選手が放ったミドルボールが寸分の違いもなく新居選手に届くが、プレッシャーを受けて
ゴールには至らず。
*数的不利を衝かれる場面が続く。最終ラインでクリアはするが、なかなか攻撃に繋がらない。
*84分:金選手がファールを受けて足を傷める。担架で運ばれたが程なく復帰した。
*88分:[失点(0-2)]田中英雄
鳥栖陣内ハーフウェーライン付近で、神戸・田中選手がドリブル。尹選手のファーストディフェンスが弱く突破されてしまい、加藤選手と金選手も振り切られてしまう。シュナイダー選手が身体を張ったが、手をかすめてゴールに吸い込まれた。試合終了近くの痛い失点。
*ロスタイム2分。長谷川選手が大きくサイドチェンジして廣瀬選手がシュートを放ったが惜しくも外れる。
【松本監督 記者会見】
*『自滅』と表現できる試合だった。
*前半は守備も崩れず決定的なシュートを打たせなかったが、90分通して起点となる攻撃が
出来なかった。サイドでボールの起点とすべきところが出来ず、また前線にもくさびのパスが
出せず、攻撃面でミスの多い試合となってしまった。
*三浦のFKは、百も承知だっただけに、もう少しその前のプレーで辛抱が必要だった。
*2点目は自滅。相手からボールを奪い、繋ぐところでミスが多く、攻撃の起点がないまま
終わってしまった。
*残り10試合ほどだが、応援して下さるサポータに迷惑のかからぬよう、立派な試合を
お見せしたい。次節までに日がないが、3日で立て直したい。
(Q)守備面の評価は?
失点までは互角だったといっても良いだろう。高地に関しては勝つことへのチャレンジを
したので責められない。尹はワンタッチが出来るのに今日は持ちすぎた感がある。
相手も激しく潰しに来たので、良い形が出来なかった。
(Q)新居選手が負傷したようだが…
左肩を脱臼・靭帯断裂しているのだが、チーム作りの中で彼の「出場したい」という意思を
尊重して、後半、無理をさせたが起用した。足の状況は現時点では不明なので、コメントを
差し控えたい。その他の攻撃陣の出来については、皆さんのご判断にお任せする。
FWで出場した廣瀬選手は「90分の中で、みんなが苦しい時間帯にもっと(ボールのある場所に)
顔を出していかなければならなかった。神戸DFの裏を突いていけ、という指示が出ていたが、
連係の部分で反省が残った。あとはコンビネーションとパスのタイミングに磨きをかけたい。
次に負けて連敗するのは絶対にアカン、もう一度気持ちを引き締める」と険しい表情で語った。
今季初出場を果たした小井手選手は「ベンチで見ていて、いつものパス回しでは通っているボールが
今日はうまく回っていない様子だった。出場のときは『サイドからどんどん上げろ』といわれた。
交代で攻撃にスピードも出てきたが、局面で身体を張るのは神戸のほうだった。僅かな差が
実はとても大きく、チャンスをものに出来るか…が決定力の差になると思った。もう後がないので
理屈抜きに、気持ちを前面に出して全力で戦わなければならないと思う」と、冷静に試合を
振り返った。
上位争いから一歩後退の感は否めないが、闘争心はむしろ激しく再燃したサガン戦士たち。
4日後に控える首位との決戦、一矢報いなければ…と気持ちを新たにして、神戸を去った。
[レポート: 壽山知里]