HOME便り(AWAY便り特別編)
2007/11/24 J2第51節 ホーム・モンテディオ山形戦前日
尹 晶煥選手 (MF8)
早いもので今日はホーム最終戦です。今季の残り試合も少なくなりましたが、サガン戦士たちは
一戦必勝を目指して全力で練習に励んでいます。
今回はホームゲームですが、『AWAY便り・特別編』として、尹晶煥選手の登場です。
在籍2年目の今年は怪我や苦悩が続きましたが、ベテランの自覚と責任のもと、いつでも厳しく
そして熱く取り組んできました。若き仲間たちへの苦言も、サガン鳥栖を成長させていく上で大切な
“愛のムチ”。四半世紀にわたってサッカーを愛している尹選手からのメッセージを受け取って下さい。
[良薬口に苦し]
― 客観的に考えて、今季立ち上がりの不振の原因は何だったと思いますか。
昨年が4位で終わったということもあり、今季の初めは内外で期待が高まっていました。新しい
選手が増えて、サガン鳥栖のサッカーをしていく上ではコミュニケーションが更に大切でしたが、
残念ながらスムースではありませんでした。そのためチームとしてどう戦うかが確認できていなかった
選手一人一人が、鳥栖のサッカーを実現するために自分は何をしたらいいかと“考えながら”サッカー
する、という点が不足していたのだと思います。シーズン序盤に怪我人が相次いだのも残念な事でした。
― 終盤になって、ようやく“サガンのサッカー”が見られるようになりました。
序盤は不調でしたが、結果としては今年は20勝しています。でも、今の状況に満足してしまって、
シーズン当初と同じくコミュニケーションが上手くいかなければ、良いサッカーをしても結果が伴いま
せん。シーズン序盤に出場していた選手たちが、今は試合に出ていない…残念ですが、これもプロの
世界では当然の事だと思います。
― 結果が出始めても、なお課題は多いということですね。
トップで試合に出ている選手とサテライトの選手では、まだまだレベルの差が開いています。例えば
トップチームの選手に負傷者が出て、穴をうめる選手の意識のレベルが違ったら、効果的とはいえま
せん。日頃から選手一人一人がレベルアップを考える必要があります。
― プロとしての厳しさを追求していく必要がありそうですね。
今も感じるのは…コミュニケーションを潤滑にする上では仲が良いのは大切ですが、『仲が良過ぎ
る』ということです。たくさんのチームや方法など選択肢があるため、必死にならなくてもサッカーを
実現できてしまう状況があります。
例えば、日頃ピッチ外で“〜さん”と呼んでいる人をピッチの上で呼び捨てにする=同等に考えるならば、自分自身もそれなりにレベルの高いプレーを見せなければなりません。プロであるという状態では
あるけれど、プロとしての中身が伴っていなければどんどん下から突き上げられていきます。
私は、プロの世界は『銃弾のない戦争』だと例えています。日々厳しい競争や戦いを勝ち抜いて
いかなければならない。プロとして日頃からどれだけ厳しくサッカーに打ち込めるか、打ち込んで行か
なければならないか…そう考えると、まだまだ甘いと感じざるを得ません。
― ベテラン選手として、チームにどのような刺激をされましたか。
自分の経験に基づいて、意識の改革をしていきたいと考えました。“経験”をどのように伝えたら
いいか、いつも試行錯誤しながらやっています。その際重要なことは、ベテランが経験を伝え、その
思いにみんなが共感するということです。でも、自分自身にとって耳が痛くなる内容もあるのか、
メンバーの三分の一は右から左へと受け流しているのがとてももどかしい。次第に私自身も無意識
のうちにストレスが溜まり、怪我と言う形で表れてしまいました。
それでも、昨年から言い続けてきたことで、今出場している拓磨(日高選手)・義希(高橋選手)・
衛藤たちは変わってきたと思いますよ。意識が高くなってきたと感じます。
[一人のプレーヤーとして…]
― 韓国での経験を教えて下さい。
Kリーグは新人たちも最初から努力して勝ち抜いていきます。最初に所属した富川SCをはじめ、
資金が潤沢なチームが多いです。…でも、富川SCに所属した最初の頃、チームは楽しくないサッカー
をしていました(苦笑)、ゴール前をひたすら守ってロングパス一本だけで攻めて…。監督が変わり、
私も必死に頑張って、チームの中心になった頃には、ようやく見ていても楽しいサッカーに変わって
いきました。それに伴って、小・中学生の選手たちも目標にするようになっていきました。全北現代は
錚錚たるメンバーがいて、所属した当初から強かったです。若い人たちが必死に頑張らなければ
ならない環境でした。
サッカーに対する目はかなり厳しいですよ。観客みんなが監督になったかのように厳しい野次も
飛んできますし(苦笑)。でも厳しさと同じ分だけ、熱心に応援してくれます。
― 応援はどのように伝わっていますか。
AWAYでもホームでも人数の多少に拘らずいつも足を運んで下さって、本当に心から感謝しています。
今年は残念ながら怪我で試合に出られないことが多く、ホームゲームで客席から試合を観る機会が
多いのですが、良いパスが出なかったりシュートを外したりすると会場中からため息が聞こえることが
あります。サッカーを知るにつれて、見どころが増えて楽しくなっていることが伝わってきます。温かさと
同じくらい、厳しさも必要だと思います。選手たちは、サポーターやファンの方々の期待や叱咤を感じて
プレーしなければならないと思います。我々プロ選手は、見せるサッカー・楽しいサッカーをしていく
必要があるのです。でも、中には自分の健康のためにサッカーをしているのでは?というプロ選手も
いますが…(苦笑)。
― MFの魅力は。
(インタビュアーに向かって)あなたがご覧になって、私のプレーの魅力は何だと思いますか?(笑)
MFの魅力は、中学時代からキックを楽しんできたことで、ショート・ミドル・ロング…様々なパスの
使い分けができることですね。サッカーをよく観ている方には分かる“妙技”の部分だと思います。
日本ではまだまだゴールをした人に注目が集まりますが、パスを出す人にも注目してほしいです。
ラストパスを出す選手の良いプレーはカッコ良いと思います。
― 尹さんにとってサッカーとは。
職業です(笑)、生きるための手段でもあります。サッカーは25年間続けてきた唯一のことなので、他に得意なことが見つからないですね。
まだまだ現状では満足せず、常に今後の事を考えています。怪我のためにピッチの外でリハビリをしたり運動することが多かったですが、選手だったらやはりピッチの上でサッカーがしたいですから。
[更なる飛躍のために]
― 今季から継続して来季に繋げるために大切なことは。
私が鳥栖に来て2年とも、開幕戦で負けてしまっています。どんなことでも最初が大切だと思います
ので来季は絶対に勝利したいですね。これからも人や環境が変わっていくと思いますが、“継続する”
ということは本当に大切だと思います。
サガン鳥栖を取り巻く環境は良くなってきたと思いますが、それでもまだ昔のイメージが残っていて
応援を躊躇される方もいる。良い認識を持って頂くには、サッカーで結果を出して選手たちがイメージ
を変えていく必要があります。サガン鳥栖のサッカーは『誠実』『よく走る』など、評価も高まってきて
いますが、更に努力してチームの良い姿を示していかなければなりません。
― 若きチームメイトたちにも、期待することが多いと思います。
例えば、同じポジションの義希や衛藤たちは、試合を重ねながらどんどん良くなってきていると感じ
ます。チームが上位にいないと厳しい部分はありますが、良いサッカーをしているということを見せて
ほしいです。昨年に辰(ジェフ千葉・新居辰基選手)が認められてJ1に行ったように、上を目指して
ほしいですね。
二人に限らず、全員が日々厳しさを感じてサッカーに取り組み、メンバーに選ばれた11人が意識して
試合に臨んでいけば、いずれは浦和レッズのように自力のついたチームになっていくと思います。
― サポーターの皆さんにメッセージを。
外国籍の選手である私たちにも温かい応援をして下さり、心から感謝しています、有難うござい
ます。3年目となる来季は、怪我なくプレーできるように心掛けていきたいです。もっともっと大きな夢を持って、サポーターの皆さんにも良いプレーをお見せして、良いチームにしていきます。
…J1に連れて行きます!
(取材・文・写真: 壽山知里)